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コラム

工場・倉庫ができるまで 鉄骨造の建築工程ガイド

工場や倉庫を新しく建てる計画を立てたとき、「実際に完成するまで、どんな工事がどの順番で行われるのか?」という点が気になる方は多いのではないでしょうか。

建築は大きな投資です。そして工場や倉庫といった施設は、完成後すぐに事業運用へ直結する重要なインフラ。だからこそ「どんな工程を経て建てられるのか」を把握しておき、工場・倉庫建築のイメージを掴んでおきましょう。

「地盤調査って本当に必要?」「鉄骨建方って何?」「外構工事ってどのタイミング?」そんな疑問を感じたことがある方に向けて、今回は【鉄骨造の工場・倉庫】が完成するまでの工事工程をわかりやすく解説します。

この記事を最後まで読むことで、建築全体の工程や注意点が明確に理解でき、「安心して任せられる施工の流れ」が見えてきます。それではさっそく、地盤調査からスタートする工程を順に見ていきましょう。

地盤調査、柱状改良

工場や倉庫の建設を進める上で、最初に行う大切なステップが「地盤調査」です。

なぜなら、どんなに立派な建物を設計しても、その下にある地盤が軟弱では、安全で長持ちする建物にはなりません。特に埼玉や東京の一部地域では、昔は田畑や湿地だった土地も多く、地盤が弱いケースが少なくないため、事前の調査は欠かせません。

 建築主の方からすると、「地盤のことなんて専門外だし、調査が本当に必要なの?」と感じるかもしれません。ですが、実際に地盤が弱く、そのまま工事を進めてしまった場合、建物が傾いたり、沈んだりするリスクが発生します。将来的な修繕費や事業の中断リスクを防ぐためにも、最初の段階で地盤の状態をしっかり確認しておくことが極めて重要です。

 では、具体的にどのような手順で調査と改良を進めていくのかご説明します。

 まず、建設予定地で「スウェーデン式サウンディング試験」「ボーリング調査」などの地盤調査を行い、地盤の固さや支持層の深さを測定します。この調査によって、建物の重さに耐えられる地盤かどうかを判断できます。

 調査の結果、地盤が軟弱でそのままでは建物を支えられないと判断された場合、「地盤改良工事」を行います。代表的なのが「柱状改良工法」です。これは、地面を掘削しながらセメント系固化材を注入して、地中に人工の杭のような「柱」をつくり、地盤の強度を高める方法です。

 さらに重量鉄骨造など特に重い建物を建築する場合、柱状改良ではなく杭を打つ必要があります。杭は鋼管杭や既製コンクリート杭などの種類があります。これらを支持層と呼ばれる地盤の強固な層まで打つことで、重い建物を軟弱な地盤でも支えることができます。

 なお、地盤改良や杭工事は建物の規模や地盤の状態によって方法や費用が変わります。施工前には必ず建設会社と相談のうえ、現場ごとの最適な対応策を検討しましょう。

基礎工事

地盤調査と必要な地盤工事が完了すると、次は建物の「基礎工事」に入ります。

ここは、まさに建物の“土台”をつくる工程であり、工場や倉庫のように重量のある構造物では特に重要なポイントとなります。

この工程は精度と強度が求められる高度な作業です。なぜなら、建物全体の重さをバランスよく地面に伝え、長期間にわたって沈下や傾きを防ぐ必要があるからです。

鉄骨造の工場や倉庫に多く採用されるのは「ベタ基礎」や「独立基礎」という工法です。

・杭基礎は、建物の荷重を地盤の深い部分に伝えるための基礎工法です。軟弱な地盤や、大きな建物を支える必要がある場合に採用されます。杭を支持層まで到達させて支える「支持杭」と、杭と地盤の摩擦力で支える「摩擦杭」の2種類があります。

・布基礎は、建物の壁の下に帯状に連続して設けられる基礎のことです。逆T字型の鉄筋コンクリートを基礎として使用し、建物の荷重を点で支える構造です。

 実際の工程は以下のように進みます。

 掘削作業:まずは地面を掘って基礎の形を作るための穴を掘ります。

 捨てコンクリート打設:その後、正確な位置出しを行うための“捨てコン”を打設。

 配筋工事:基礎に必要な鉄筋を組み立てます。この鉄筋が、コンクリートと一体化することで強度を発揮します。

 型枠設置・コンクリート打設:鉄筋のまわりに型枠を組み、その中にコンクリートを流し込んで固めます。

 養生期間:コンクリートはすぐに固まりません。十分な強度が出るまで数日〜1週間ほどの“養生”期間を取ります。

鉄骨建方(たてかた)

鉄骨造の建物において、最もダイナミックで見ごたえのある工程が「鉄骨建方」です。

この工程から、いよいよ建物の“カタチ”が現れはじめます。基礎の上に骨組みである柱や梁を組み上げていくことで、空間の大きさや高さが実感できるようになり、施主様にとってもワクワクが増す瞬間です。

ただし、見た目の派手さとは裏腹に、実は非常に繊細かつ高度な技術が求められるのが鉄骨建方の現場。

作業の安全性・精度・効率のすべてが問われる重要工程なのです。

 建方に入る前には、まず部材が工場で製作され現場に搬入されます。現場ではそれを順に組み上げていくのですが、工程は以下のように進行します。

鉄骨部材の搬入と仮置き

あらかじめ準備されたスペースに、柱・梁などの部材を搬入します。現場の限られたスペースを最大限に活用する計画力が求められます。

建方作業(本組立)

クレーンを使用しながら、まずは柱を基礎に設置。次に梁を取り付け、設計図通りに組み上げていきます。各接合部は、ボルトで仮止めし、あとから本締めを行います。

精度確認(建方検査)

組み上がった骨組みが図面通りの垂直・水平を保っているかどうかを、レーザー測定器などで細かくチェックします。この確認が甘いと、外壁パネルや屋根の取付がズレてしまうリスクがあるため、非常に大事なステップです。

本締め・溶接・塗装補修

すべての位置が確定したら、接合部を本締め・溶接し、塗装の補修を行います。

鉄骨建方は、鉄骨造の建物の骨組みが姿を現し、「完成が見えてきた」と実感できる工程です。

屋根、外壁工事

鉄骨建方が完了すると、次は建物の「屋根」や「外壁」を取り付ける工程に進みます。

この工程では、建物の外観が一気に出来上がってくるため、施主様にとっても建設の進捗を強く実感できるフェーズです。

また、屋根や外壁が取り付けられることで、内部が雨風から守られる「乾いた建物」となり、今後の内部作業をスムーズに進めることができるようになります。

ただし、見た目の仕上がりを左右するこの工程は、施工の丁寧さや材質の選定が建物の価値を大きく左右します。工場や倉庫の場合、「耐久性」「断熱性」「防火性」「メンテナンス性」が求められるため、屋根仕様・外壁仕様の選定は慎重に行う必要があります。

 たとえば、以下のような仕様がよく採用されます。

屋根仕様:陸屋根(折板屋根より断熱性が高く、最上階でも外気の影響を受けにくい屋根です。屋根上にキュービクルや室外機等の設備を設置することも可能です。)

外壁材:鉄骨造の場合、防火性・断熱性の高い、ALCパネルを使うことが多いです。

施工の流れは以下のようになります。

陸屋根の施工

鋼製デッキに鉄筋等を配筋し、コンクリートを打設し上に防水を施します。

外壁パネル(ALC)の取り付け

鉄骨の骨組みにパネルを取り付けていき、目地には防水シーリングなどの処理を施します。

建具(サッシ・ドア)の取付

シャッターやスチールドア、窓サッシなどを設置します。工場・倉庫の用途によって大開口が必要な場合はシャッターの仕様選定も重要です。

内装工事

建物の骨組みと外まわりが完成すると、次は建物内部の「内装工事」に移ります。ここでは、実際に人が働く・荷物が出入りする空間として快適性や機能性を整えるための作業が行われます。

この段階は、施主様のご要望に基づいた“使いやすさ”や“現場に合った動線”を実現するための間取りが反映されるため、建物全体の完成度を高める非常に重要な工程です。

内装工事には、以下のような作業が含まれます。

天井・壁・床の仕上げ

工場や倉庫の床であればコンクリート土間仕上げ+表面強化剤が多いです。事務所部分などが併設される場合には、クロス貼りやフロアタイル、天井ボード等で天井・壁・床を仕上げていきます。

間仕切りの設置

休憩室、事務スペース、更衣室などがある場合、内部の間仕切りを設置します。工場の業種によっては、クリーンルームや検査室など特別な区画が必要となることもあります。

建具・什器の取り付け

内部ドアや収納、棚、流し台などの備品の設置もこの段階で行われます。動線を意識した配置で作業効率が変わってきます。

内装塗装や仕上げ確認

最終的に、各所の塗装や補修を行い、見た目・機能ともに整えます。小さな凹凸やズレも丁寧にチェックし、完成度を高めていきます。

この仕上げ作業によって、ようやく「施設として使える」状態へと近づいていきます。そして、建築工事や仕上げと並行して進行するのが「設備工事」です。空調や電気、給排水など、日常運用に欠かせないインフラ部分を整える工程です。

設備工事

建築工事と並行して「設備工事」を行います。

この工程では、電気・空調・給排水・ガス・通信など、建物を稼働させるために必要な“インフラ”を整備します。

設備工事は、工場・倉庫の使い勝手を左右する非常に重要な部分であり、機能性・安全性・将来の拡張性まで見据えて計画されるべき工程です。

 工場や倉庫など鉄骨造の建物に関して、特に“どのような設備を、どこに、どの容量で配置するか”という判断が必要になります。

特に工場においては、

 ・生産機械の電力容量

 ・空調の冷暖房能力

 ・排気・換気の位置と能力

 ・給水・排水の流量

 ・防災設備(消火設備や警報装置)

 など、細かい要素の組み合わせによって日々の業務が快適かつ安全に行えるかが左右されます。

設備工事の流れは、以下のような工程で進行します。

電気設備工事

分電盤・照明・コンセント・配線などを設置。工場では動力(三相200V)を使用する機器も多く、一般家庭とは異なる設計が求められます。非常用電源やLED照明の導入などもこのタイミングで対応します。

給排水設備工事

トイレ・手洗い・休憩スペースの流し台などのために、給水と排水の配管を施工します。床を貫通させる配管もあるため、建築と緊密に連携しながら進めることが重要です。

空調・換気設備工事

作業者の快適性を確保するため、空調機(エアコンや換気扇)の設置を行います。製造業の場合、室内温度管理や排熱処理の要件もあり、空調能力の設計は特に重要です。

ガス配管工事(必要な場合

熱処理や乾燥機器を使用する工場などでは、都市ガスまたはプロパンガスの供給ラインが必要になります。

通信・ネットワーク設備、セキュリティ設備

事務スペースや監視カメラのために、LAN配線やWi-Fi機器、電話回線などもこの段階で敷設します。セキュリティ設備である防犯カメラや防犯ライト、電子錠等もこの段階で敷設します。

設備工事は専門業者による分業で進むため、工事全体の管理(施工管理)が重要です。スケジュール調整がスムーズに進まないと、次工程に影響が出るため、信頼できる施工会社を選ぶことが成功の鍵です。

この工程が完了すれば、建物としての機能がすべて整った状態になります。

いよいよ最後の工程である「外構工事」へと進んでいきます。

外構工事

建物本体とその内部の工事が完了すると、最後に行うのが「外構工事」です。

外構工事とは、敷地全体の使い勝手や印象を左右する、いわば“建物の顔”を仕上げる工程。見た目の美しさだけでなく、安全性や機能性、雨水処理や防犯など、さまざまな役割を担います。

工場や倉庫を建てる企業の経営者の方にとって、「建物ができれば完成」と思われがちですが、実はこの外構工事の仕上がりによって、日々の運用のしやすさや安全性、敷地全体の価値が大きく左右されるのです。

では、実際にどのような工事が行われるのでしょうか?

主な外構工事の内容は以下のとおりです。

1. 舗装工事(アスファルト・コンクリート)

搬入車両や従業員の車両が安全に出入りできるように、駐車場や通路を舗装します。

アスファルト舗装は施工が早く、コストを抑えられるため多く採用されています。一方で、重機が頻繁に出入りするエリアや荷捌きスペースなどには、耐久性の高いコンクリート舗装が選ばれることもあります。

2. 排水設備・雨水処理

敷地内の排水計画も非常に重要です。大雨の際、雨水が建物や通路に溢れ出さないように、U字溝や側溝、集水桝などを設けて、排水がスムーズに行えるよう設計します。

埼玉や東京の都市部では特に、近隣住宅や道路への流出を防ぐ「浸透マス」の設置も求められることがあります。

3. フェンス・ゲート設置

防犯性を高めるため、敷地を囲うフェンスや塀、自動ゲート・シャッターゲートなどの出入り口設備を設置します。これらはセキュリティ対策として必須の設備です。

4. 緑化・景観工事

計画地の自治体の条例等により、一定面積以上の敷地には「緑化面積の確保」が義務付けられるケースがあります。

低木や芝生の植栽により、敷地の景観を向上させ、ヒートアイランド対策にも貢献します。また、社員の方や来訪者様にとっても印象の良いエントランスや駐車スペースとなります。

5. サイン・表示・照明

敷地の出入り口や建物正面には、社名サインや案内板を設置します。夜間の安全確保やセキュリティのため、LED照明や防犯カメラの設置も併せて行うと効果的です。

外構工事は建物完成直前の作業のため丁寧に仕上げることで、工場・倉庫の使いやすさと満足度が大きく向上します。

完了検査・引渡

すべての建築・設備・外構工事が完了すると、いよいよ「完了検査」と「引渡し」の工程へと進みます。

これは、建物が設計通りに、安全かつ法令を遵守して施工されているかを最終確認する非常に重要な工程です。

読者の方の中には、「ここまで工事が終わっていれば、もうすぐ使えるでしょ」と感じるかもしれませんが、この検査に合格しなければ、法律上その建物を使用することはできません。

つまり、完了検査をクリアすることが、建物を正式に“使える状態”にするための最後の関門なのです。

建築完了検査とは?

建築完了検査は、建築基準法に基づいて、行政または指定確認検査機関によって行われます。

また消防法に基づいて消防完了検査を所轄の消防署によって行われます。

建築完了検査では以下のようなポイントが確認されます。

建物が建築確認申請で提出した図面通りにできているか

高さや面積、配置が法令に適合しているか

避難経路や防火設備など、安全面の基準を満たしているか

設備が設計通りに取り付けられているか

検査は通常、工事完了の直後に申請し、数日以内に実施されます。検査が無事に終わると「検査済証」が交付され、これにより法的にその建物を使用開始できる状態になります。

引渡しとは

完了検査に合格し「検査済証」が交付されると、いよいよ施工会社から施主様への「引渡し」が行われます。

引渡式では一般的に下記の内容を実施します。

・鍵の引渡し

・引渡書類や取扱説明書の受け渡し

・設備や機器の使い方の説明

・メンテナンスの方法や注意点の案内

・保証書や各種検査記録の提出

工場や倉庫の場合、建物の用途に応じて、施主様が機械を搬入したり、什器を設置したりする工場稼働準備をこの引渡し後に行うこともあります。

そのため、引渡し時点で「何が完了していて、何が施主様工事か」を把握しておくことが、円滑な稼働の第一歩です。

注意すべきポイント

引き渡し前の施主検査が重要:施工者と一緒に事前に不備がないかチェックし、是正対応を確認してから引渡しを受けましょう。

書類の保管をしっかり:検査済証や保証書、設備の取扱説明書などは将来の修繕や売却時に必要になります。

引渡し後の点検体制も確認:施工会社によっては、1年点検・2年点検などのアフターサービスがあります。埼和興産でも、引渡し後の定期点検やご相談体制を整えております。

こうしてすべての工程が完了し、建物が無事に施主様の手に渡ることで、工事はひと区切りとなります。

まとめ

ここまで、鉄骨造による工場・倉庫建築の工程について、地盤調査から引渡しまで、順を追って解説してきました。

工場や倉庫の建設は、一見すると“建物を建てるだけ”のように見えて、その裏では多くの専門的な判断・調整・施工が重なり合い、ようやく一つの形になります。

そして、それぞれの工程には必ず「目的」があり、「重要性」があります。

地盤調査では、建物が安全に支えられるかを見極め

 鉄骨建方では、骨組みの精度と安全性が問われ

 設備工事では、使いやすく効率的な空間づくりが求められ

 外構工事では、敷地全体の快適性や印象が決まる

 つまり、どの工程も省略できず、すべてが「より良い建物をつくる」ために必要なプロセスなのです。

また、工場や倉庫というのは、企業の「生産性」や「収益性」に直結する重要な拠点です。だからこそ、施工の品質はもちろん、事前の計画や段取り、法令遵守、コスト管理など、あらゆる面において安心できるパートナー選びが欠かせません。

埼和興産では、埼玉・東京エリアに根ざした建設会社として、鉄骨造の工場・倉庫建築に携わってきました。

地元特有の地盤条件や行政対応、近隣への配慮など、全国展開のゼネコンではカバーしづらい細やかな対応が強みです。

設計段階から、確認申請、施工管理、アフターフォローまで、建築のプロとして一貫対応いたしますので、

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