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コラム

【建設会社が解説】2024年版マンション建設費急騰の理由とは?

土地を所有されている方々にとって、その有効活用は常に大きな関心事です。特に、賃貸マンションの建設は魅力的な選択肢の一つとして注目されてきました。しかし、近年のマンション建設費の急騰は、多くの地主の方々に戸惑いと不安をもたらしています。

「せっかくの土地を活用したいけど、建設費が高すぎて二の足を踏んでしまう」

「マンション建設を計画していたのに、予算オーバーで断念せざるを得なくなった」

このような悩みを抱えている方は少なくないでしょう。実際、建設費の高騰は土地活用の大きな障壁となっています。しかし、この状況を正しく理解し、適切な対策を講じることで、依然として魅力的な投資機会を見出すことができるのです。

本記事では、マンション建設費急騰の現状と要因を詳しく解説し、さらにはこの困難な状況下でも成功する土地活用の秘訣をお伝えします。建設業界に精通した専門家の視点から、皆様の疑問や不安を解消し、より良い土地活用の道筋を示していきます。

 1. マンション建設費高騰の現状

「最近、マンションの建設費がどんどん上がっている」そんな噂を耳にしたことはありませんか?

近年、マンション建設費の高騰は、不動産業界全体を揺るがす大きな問題となっています。
国土交通省の調査によると、2020年以降、マンションの建設費は年平均5〜10%のペースで上昇を続けています。これは、過去10年間の平均上昇率の2倍以上のスピードです。

具体的な数字を見てみましょう。

参照:国土交通省/建設工事費デフレーター
2021年より建設費が急騰している

2019年には1平方メートルあたり約25万円だった建設費が、2024年には約35万円にまで跳ね上がっています。つまり、わずか5年で40%も上昇したことになります。

この急激な上昇は、土地所有者の皆様にとって大きな課題となっています。

「こんなに建設費が上がっては、計画していたマンション建設を断念せざるを得ないのでは?」

そう考える方も多いでしょう。実際、建設費の高騰を理由に、マンション建設計画を見直す、あるいは完全に断念するケースが増えています。

しかし、ここで立ち止まってしまっては、せっかくの土地の可能性を活かしきれません。建設費高騰の背景には様々な要因があり、それらを理解することで、新たな対策や機会を見出すことができるのです。 次の章では、この建設費急騰の主な要因について、詳しく解説していきます。なぜこのような状況になったのか、そしてこの状況はいつまで続くのか。これらを理解することで、皆様の土地活用の道筋が見えてくるはずです。

2. マンション建設費急騰の主な要因

マンション建設費の急騰は、一朝一夕に起こった現象ではありません。複数の要因が重なり合って、現在の状況を生み出しています。ここでは、その主な要因を詳しく見ていきましょう。

 2-1. 原材料費の高騰

建設費上昇の最も大きな要因の一つが、原材料費の高騰です。マンション建設に欠かせない様々な材料の価格が、ここ数年で急激に上昇しています。

ウッドショック

「ウッドショック」という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。これは、2020年以降に起こった木材価格の急騰現象を指します。

コロナ禍での巣ごもり需要により、欧米を中心に住宅建設が活発化しました。これに伴い、世界的に木材需要が急増。一方で、パンデミックの影響で生産や輸送が滞り、供給が需要に追いつかない状況が続きました。

その結果、日本でも木材価格が2〜3倍に跳ね上がりました。マンション建設においても、型枠や内装材など、多くの場面で木材が使用されるため、この影響は決して小さくありません。

 アイアンショック

木材だけでなく、鉄鋼材料も大きく値上がりしています。これは「アイアンショック」と呼ばれています。

中国の景気対策による鉄鋼需要の増加や、世界的な脱炭素の動きに伴う高炉の停止などが要因となり、鉄鋼価格が急騰しました。2020年から2022年にかけて、鉄筋やH形鋼の価格は1.5〜2倍に上昇しています。

マンション建設において、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造が主流である現状を考えると、この影響は非常に大きいと言えるでしょう。

 電気料金の高騰

建設現場で使用する電力、そして建材を製造する工場で使用する電力の価格も上昇しています。

世界的なエネルギー需給の逼迫や円安の進行により、日本の電力会社各社は電気料金の値上げを実施。2023年以降、多くの地域で電気料金が20〜30%上昇しました。

これにより、建設現場での作業コストや、建材の製造コストが押し上げられ、結果として建設費全体の上昇につながっているのです。

2-2. 人件費の上昇

原材料費の高騰と並んで、建設費上昇に大きな影響を与えているのが人件費の上昇です。

建設業界の2024年問題と建設業界の人手不足

建設業界では、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されることになっています。これにより、これまで当たり前のように行われてきた長時間労働が制限され、労働環境の改善が進むことが期待されています。 しかし、その一方で、同じ仕事量をこなすためには、より多くの人員が必要になります。つまり、人手不足がさらに深刻化する可能性が高いのです。

実際、日本建設業連合会の調査によると、建設業界の約7割の企業が人手不足を感じているという結果が出ています。この人手不足は、必然的に賃金の上昇につながり、建設費を押し上げる要因となっているのです。

 職人の高齢化

建設業界の人手不足に拍車をかけているのが、職人の高齢化問題です。

国土交通省の調査によると、建設業就業者の約35%が55歳以上となっています。一方で、29歳以下の若手就業者は約10%にとどまっています。

このような年齢構成の偏りは、近い将来、多くのベテラン職人が退職することを意味します。その結果、技術の継承が困難になるだけでなく、さらなる人手不足を引き起こす可能性があります。

熟練の技術を持つ職人が減少することで、工事の品質維持のためにより多くの時間と人員が必要となり、結果として人件費の上昇につながっているのです。

2-3. 運送費の高騰

建設資材の運送費も、近年大きく上昇しています。これも建設費全体を押し上げる要因の一つとなっています。

コロナ禍における需要の急増

新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの生活様式を大きく変えました。特に、巣ごもり需要の増加に伴い、宅配やEC市場が急成長しました。

国土交通省の調査によると、2020年度の宅配便取扱個数は前年比10%以上増加し、過去最高を記録しました。この需要の急増により、トラックなどの運送手段の需給が逼迫し、運送費の上昇につながりました。

建設資材の運送も例外ではありません。他の物流との競合により、建設資材の運送コストも上昇し、結果として建設費全体を押し上げる要因となっているのです。

 ウクライナ侵略に伴う燃料費の高騰

2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、世界のエネルギー市場に大きな影響を与えました。特に、石油価格の高騰は顕著で、これが運送コストの上昇に直結しています。

日本においても、ガソリンや軽油の価格が2022年には過去最高水準を記録。この燃料費の高騰は、トラック輸送を中心とする建設資材の運送コストを大幅に引き上げました。

さらに、この影響は単に運送コストだけにとどまりません。建設現場で使用する重機の燃料費も上昇し、工事全体のコストを押し上げる要因となっています。

参考データ:経済産業省資源エネルギー庁

慢性的なドライバー不足と2024年問題

運送業界では長年、ドライバー不足が問題となっています。国土交通省の調査によると、トラックドライバーの有効求人倍率は全職種平均の2倍以上で推移しており、深刻な人手不足の状況が続いています。

この状況に追い打ちをかけるのが、先ほども触れた2024年問題です。運送業界でも2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されることになっており、これにより人手不足がさらに深刻化する可能性があります。 ドライバー不足は、必然的に人件費の上昇につながります。そして、その上昇分は運送費に反映され、最終的には建設費の上昇をもたらしています。

2-4. 歴史的な円安の影響

近年の日本円の急激な下落も、建設費上昇の大きな要因の一つです。

2022年には、1ドル150円を超える歴史的な円安を記録しました。この円安は、輸入に依存する多くの建設資材の価格を押し上げています。

例えば、木材や鉄鋼材の多くは海外からの輸入に依存しています。円安により、これらの資材の輸入コストが上昇し、結果として建設費全体を押し上げているのです。

また、燃料も多くを輸入に頼っているため価格も上昇しています。これは建設機械の稼働コストや資材の運送コストにも影響を与え、間接的に建設費を押し上げる要因となっています。

さらに、海外製の建設機械や高性能設備などの価格も円安の影響を受けて上昇しています。特に、最新の省エネ技術や環境配慮型の設備は海外製品に依存する傾向が高く、円安の影響をより強く受けているのです。

このような円安の影響は、短期間で解消されるものではありません。為替市場の動向は様々な要因によって左右されるため、今後も建設費に一定の影響を与え続ける可能性が高いと言えるでしょう。

2-5. 2025年に控える省エネ基準適合義務化

2025年に予定されている省エネ基準の適合義務化も、建設費上昇の一因となっています。

この新基準では、全ての新築建築物に対して、より高い省エネ性能が求められます。具体的には、外壁や窓の断熱性能の向上、高効率な設備の導入などが必要となります。

参考:国土交通省 省エネ基準適合義務化

これらの対応は、建物の質を向上させる一方で、建設コストの上昇をもたらします。例えば、高性能な断熱材や複層ガラスの使用、最新の空調システムの導入などが必要となり、それぞれがコストアップ要因となるのです。

また、この基準に適合するための設計や施工には、より高度な技術と経験が必要となります。そのため、設計費や施工管理費の上昇も避けられません。

さらに、この基準への対応を見越して、多くの建設会社や不動産デベロッパーが前倒しで対策を進めています。そのため、基準施行前から徐々に建設費が上昇する傾向が見られるのです。

このように、省エネ基準の強化は環境保護や居住性向上という観点からは歓迎すべきことですが、同時に建設費上昇の要因ともなっているのです。

以上、マンション建設費急騰の主な要因について詳しく見てきました。原材料費の高騰、人件費の上昇、運送費の高騰、円安の影響、そして今後の省エネ基準強化など、様々な要因が複雑に絡み合って現在の状況を生み出しています。

これらの要因の多くは、短期間で解消されるものではありません。そのため、今後しばらくの間は建設費の高止まりが続く可能性が高いと言えるでしょう。

では、このような状況下で土地所有者の皆様はどのように対応すべきなのでしょうか?建設費高騰に負けない土地活用の秘訣について解説していきます。

3・建設費高騰に負けない土地活用の秘訣

ここまで、マンション建設費急騰の現状とその要因について詳しく見てきました。確かに、建設費の上昇は土地活用を考える上で大きな課題となっています。しかし、だからこそ今こそ、賢明な土地活用が求められているのです。 では、建設費高騰の時代に、どのように土地活用を進めていけば良いのでしょうか。ここでは、その秘訣をいくつかご紹介します。

1. 長期的視点を持つ

 建設費の高騰は一時的な現象ではありません。しかし、だからこそ、短期的な利益だけでなく、長期的な資産価値の向上を見据えた計画が重要です。例えば、高い省エネ性能を持つマンションは、将来的な光熱費の削減や資産価値の維持につながります。

2. 専門家との連携

   建設費高騰の時代だからこそ、専門知識を持つパートナーの存在が重要です。地域の事情に詳しい地元のゼネコンや不動産会社と連携することで、効率的な建設計画や適切な投資判断が可能になります。

3. 高付加価値化の追求

 建設費が上昇する中、単純に「安く作る」ことは難しくなっています。そのため、高品質・高機能な物件を作り、それに見合った家賃設定をすることが重要です。例えば、高断熱・高遮熱性のRC造賃貸マンションは、居住性の高さから安定した需要が見込めます。

4. 段階的な開発

  大規模な開発を一度に行うのではなく、土地を分割して段階的に開発することも一つの選択肢です。これにより、初期投資を抑えつつ、市場の動向を見ながら柔軟に計画を調整することができます。

5. 補助金や優遇制度の活用

  省エネ性能の高い建物や、地域のニーズに合致した建物には、様々な補助金や税制優遇が用意されています。これらを上手く活用することで、建設費の負担を軽減できる可能性があります。

6. 新しい建築技術の採用

   プレハブ工法やモジュール工法など、工期短縮と品質向上を両立する新しい建築技術が登場しています。これらを採用することで、建設費の削減と工期の短縮を図ることができます。

7. 地域のニーズに合わせた企画

  

  単にマンションを建てるのではなく、地域の特性やニーズに合わせた企画を立てることが重要です。例えば、高齢化が進む地域では、バリアフリー設計や介護サービスと連携した賃貸マンションが好評を博しています。

これらの秘訣を踏まえ、建設費高騰の時代にあっても、賢明な土地活用は十分に可能です。重要なのは、目先の利益だけでなく、長期的な視点を持ち、地域の特性やニーズを的確に捉えることです。

確かに、マンション建設費の急騰は大きな課題です。しかし、この状況をチャンスと捉え、より価値の高い土地活用を目指すことができれば、将来的には大きな成功につながるはずです。

土地活用の道のりは決して平坦ではありませんが、適切な戦略と専門家のサポートがあれば、必ず道は開けます。皆様の土地が、地域に根ざした価値ある資産として輝き続けることが出来るよう、お手伝いさせていただければと思います。

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